2008/06/27

WEBERのセッティング(その3 セッティングパーツの基礎知識)

セッティングパーツの基礎知識とおまけ情報(青字部分)


--- メイン系統 ---

①メインジェット(MJ)
スロットル開き出し~全開時の燃料の供給量を決めるもの。

 スロットル開度中~大で大きく影響しますが、実際には僅かに開いた辺りから効くので、厳密には全域に影響しています。

②エアージェット(AJ)
スロットル全開時に供給する燃料と混合する空気の量を決めるもの。

 
スロットル開度が大きいほど影響力が大きくなりますが、これもほぼ全域に影響するといっても差し支えないと思います。エアホールが大きいほど高回転で混合気が薄くなる特性があり、これは特にエマルジョンチューブF11で顕著に出ます。

例えば、

(a)「MJ130+AJ180」では番号の差が50番
(b)「MJ140+AJ210」では番号の差が70番

両者ともフルストットルの高回転で同じ空燃比を示すと仮定すると、番号差の大きい(b)の方が中低速回転が濃くなります。

(a)は全域でアクセル開度に忠実にレスポンスしますが、低回転からラフに踏み込むと息つきを起こしやすいので、その分IJやPJのサイズを大きくして補う必要があります。個人的には番号差の少ないセットが好きです。
(b)はアクセルレスポンスは多少落ちますが、低回転から一気に踏み込んでも息つきを起こしにくいので、スロー系ジェットうあPJは(a)より小さめになります。PJの機能を補っているような感じです。

--- スロー系統 ---
③アイドルジェット(IJ)
アクセル開度が少ない時を中心に燃料と空気の量を決めるもので、主に街中など低負荷走行時の燃調を支配します。
フルスロットルでもIJから燃料を供給し続けるので、高回転にも多少の影響はあります。
小さめのサイズだと負荷の少ない1・2速では僅かなスロットル操作にも敏感にレスポンスしますが、高いギアで走るとトルク不足になっていることが多いので注意してください。

--- 加速系統 ---
④ポンプジェット(PJ)
燃料は吸い込まれる空気より質量が重いので、急激にスロットルを開くと燃料の供給が追い付かなくなります。そういう時に一定量の燃料を加圧して噴射させる機能を持ちます。この噴射は全開にしてから1秒程度で終わります。

  アクセルオンの瞬間以外でも常時少量の燃料が漏れているので、加速時以外の燃調(たとえば巡航時)にも影響します。PJを35→40に交換しただけで、高 速巡航時の空燃比がかなり濃くなりました。また鈴商のダイナパックでも同様の実験をして、全域で僅かに濃くなることを確認しています。
あくまでも感覚ですが、PJを35→40に変更すると、巡航時でIJで1サイズ、全開でAJで5番程度の差はあるように思います。


アウターベンチュリー(OV)
キャプレターの内径を絞り、空気の流速を高めて負圧を発生させるもので、これによりスムーズな燃料の吸出しが行われます。内径のサイズを大きな物に変更す ればビッグキャブと同様のパワーアップ効果が得られますが、大きすぎると低回転で吸気速度が遅すぎて燃料の霧化がされにくくなり、中低速トルクの減少や燃 費の悪化に繋がるおそれがあります。
 OVのサイズアップは、手頃で効果も大きいのでお勧めです。しかし燃調を全面的に見直す必要があります。
サイズアップにあわせた燃調のポイントは、次の通りです。
(a)全開時の混合気量が増えるので、MJのサイズを上げる。MJのサイズは、OVの口径×係数4を基準(φ34×4≒MJ135)とする。これを基準に 5番上下してMJ130,135,140の3通りに合うAJを探れば、大抵は大丈夫だと思います。加工品など純正品にない大きなOVの場合は、係数を5% ほど大きくした方が無難です。
(b)中低速で混合気の流速が遅くなるので、次の処置を行う。
 ・スロー系(IJ)のサイズを上げる(必須)
  IJが大きくなるとアイドルアジャストスクリューの戻し回転数が少なくなります。
  対策後キャブのセオリーである2.5回転という数字は忘れるべし。
 ・高回転のエアブリードを最大限に利用するため、(できれば)ETをF11に交換し、AJのサイズを大きくする。これに空燃比のバランスが取れる大径のMJがセットされれば相対的に中低速が濃くなり、低回転で混合気の流速が低下しても燃料の供給が楽になる。

 標準のφ30から加工品のφ38に交換したら6馬力アップしましたが、4500回転以下がスカスカになりました。ノーマルカムが中低速用で吸気量も少なかったので仕方ないです。同じ排気量でも早いカムが入っているバーキンでは、かなりのパワーアップを体感することができました。

 ウエストのノーマルカムの場合、OVはφ32(バーキンKENTの標準サイズ)が最適だと思います。φ36は3000回転以上で明確にパワーアップするけど、それ以下のトルクが極端に痩せてしまいます。元々最大トルクを2800回転で出すカムが入っているから、非常に相性が悪いとしか言いようがないですね。
 KENTCAMS・CVH22(ストリートカム)に交換した場合は、φ34が最適でフラットかつパワフルです(実測113馬力でフラットトルク)
飛ばし屋さんならφ36まで使えるかもしれません。加工品のφ37を試したところ、高回転は抜群だけど大切な中速トルクが明確に減少したので、ストリート向けではありません。

⑥インナーベンチュリー(lV
メイン系で作られた混合気を、外部からの空気と一緒にインマニに送り出すもの。口径を変えることにより、混合気の総量を調整することができます。
 
⑦フロート
フロートチャンバー内に溜めておく燃料の油面高さを調整するもの。
油面調整はキャブ調の基本であり、初期段階で済ませておく必要があります。後で油面高さを変更すると、苦労したキャブ調が台無しになります。

⑧エマルションチューブ(ET)
MJとAJで計量された燃料を混合し、エマルジョン(微粒化)するものです。
様々なタイプがあり、エンジンの特性に与える影響が大きいパーツです。

エマルジョンチューブの比較(F11とF16) ※小排気量エンジンでよく使われるタイプです。

【F11】  高回転でAJから供給される空気の混合(エアブリード)の影響が大きくなり、高回転で混合気が薄くなると一般的に説明されているタイプです。実際には高回 転を基準に燃調を進めるので、相対的に中低速回転域が濃くなるということです。低回転からアクセルを一気に踏み込んでも燃料供給が途切れにくいので、低回 転で薄くなりがちな大径OVとは相性が良いでしょう。
とりあえず走るだけの暫定セットは出しやすいですが、空燃比の変動が大きいので気をつけるべきです。
ラフなアクセルワークを受け付けるので乗りやすいですが、繊細なアクセルコントロールには反応しにくくなります。

【F16】 高回転でのエアブリードが少ないタイプなので、回転数による空燃比の変動は少ないですが、トップエンドに対して中低速が薄くなります。したがってスロー系と加速系のジェットはF11の時よりも大きめになります。
安定した空燃比と良好なレスポンスにより、F11よりスポーツ走行に適していると思います。

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